新入社員の頃、デスク(上司)に「物差し持ってないか」と言われ、引き出しの中にあった〝物差し〟を差し出すと、「こりぁ倍尺(ばいじゃく)ばい」と笑われたことがあります。
長さ45㎝ほどの倍尺、見た目はまさに物差し。でもよく見ると、メモリの単位はセンチではなく「倍(ばい)」と「行(ぎょう)」です。新聞を作るときには、この「倍」という単位が見出しや写真の大きさ、長さの基準となります。「行」は紙面上の一定の空きスペースに何行くらいの記事を流すことができるかを測ります。編集部員にとっては「神器」と言えます。ただ、このスグレモノはプラスチック製。紙面づくりに没頭しすぎ、無意識のうちに無理な力を加えてしまうと真ん中からパキッ…なくては仕事にならないので上司に再交付を願い出ることになります。